誰しもがお持ちの個性。

 これが出来上がる家を左右することは言うまでもないこと。

 だから、建て主さんの個性を掴むことが、もっとも大切な作業の一つとなるのが設計。

 

 どのような相手に家を注文するにしても、まずは最初にヒアリング、

 つまりは要望の聞き取りをするところから始まる。

 ヒアリングは設計の条件となる敷地や、予算、家族構成、部屋数などから聞くことになるわけだが、

 この辺りは、個性とは言わない。

 将来の展望などを聞き始めて、やっと個性が見え始めるのであるが、

 個性がこのような大きな部分にしかないなどと思うのは、大きな間違い。

 数多くの建て主さんと会っている設計屋ですら、心の中で「えっ!?」と呟いてしまうような

 変わった思いを持っておられるのが、どちらかというと普通である。

 

 特徴的な個性を挙げると、屋根の上に作ったバルコニーに手摺を付けるなんてとんでもない!

 と言った建て主さんである。

 理由が、「屋根には手摺がないものでしょ!」。

 ・・・ネタではない。実話である。

 これほどまでに個性とは千差万別なもの。

 個性とは、細かい部分にまで及び、その部分に配慮ができるかどうか、が、

 出来上がった後の満足度をアップする唯一の手段。

 

 ところが、個性さんは簡単には顔を出してくれない。

 個性を掴みにくいモノにしているのは、一つは、建て主さん自身にとっては当然のことで、

 まさか個人差があるなどとは思っていない、つまり個性だと認識しておられない事が珍しくないこと。

 それから、設計というのが、そのような細かいことまで配慮出来る、

 つまり設計に対する要望として挙げるべき事、と認識しておられないこと。

 また遠慮されることも多いし、恥ずかしい、といった場合もある。

 

 だから、何度も何度も打合せを重ね、小さい話や大きい話を繰り返して、やっと少しずつ見えてくるもの。

 数回程度の打合せで見えるようなシロモノではないからこそ、打合せに時間を重ねる必要があるのだ。

 だから「自由設計」などと言いながら、出来るだけサッサと建ててしまおうとする会社は、

 設計などしてないのと同じ、と設計屋は思うのである。

 

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