お客さんの「欲しい!」に応える。これが商売の基本である。

 どんな理想を語ろうが、見事な屁理屈を捏ねようが、欲しくなければ買わないのだから、当然のこと。

 

 だが家造りに関してだけは違う、と言いたい。

 商売の基本通りにすることが、なぜ違うのか。

 お客さんの言うままに造れば良いではないか。

 それが普通だろうと思われるだろうが、そう簡単にはいかない。

 

 何故なら、設計屋は、自分の要望通りに造った家で後悔をしている住まい手を数多く知っているからだ。

 それを知っているのに要望通りに造るのは、プロの仕事じゃなかろう、と言いたいわけ。

 その後悔を情報として知った上で、年がら年中間取りのことを考えている設計屋でも、

 満足のいく計画はコストや法律の壁もあって、そう簡単には出来ないもの。

 それを建て主と、手間が掛かることを嫌う造り手だけで作ったらどういうことになるか、推して知るべし。

 

 住宅は、どこに頼んでも「一品モノ」。

 大量生産品や規格品といった、多数派の意見を重視する必要があるものとは違い、

 住まい手である一個人(家族)が満足することが第一の目標。

 だからこそ、建て主の意図や思いを汲み取り、打ち合わせを繰り返し、

 失敗例も含めた情報の提供をして、建て主と一緒になってプランの検討を重ねる。

 建て主の満足度を高めるには、この設計という作業が不可欠なのだ。

 要望通りに作るということは、建て主の気持ちを汲み取り、

 プロとしての助言・提案をする設計という作業をしていないのと同じである。

 

 技術的な事は解らなくても、使い勝手の事はプロなんかに聞かなくても解る。

 なんたって、毎日掃除も洗濯もしているのだから、と考えておられる方々。

 厳しいようだが、そのセリフを言う資格があるのは、三つ目の家を建てるヒトだけである。

 だって、昔から家は三回建てて初めて満足できる家になるというじゃありませんか。

 

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