色々なモノが難しい時代になったが、住宅だって同じ。

 住宅で何が難しくなったかというと、選択肢が多種多様になったってことである。

 選択肢が増えるってことは、住まい手にとって、喜ばしいことであるはずなのだが、

 その増加に比例して住まい手の負担、つまり、悩み事が増えていると感じる今日この頃。

 

 昔は、選択肢自体が少なかったし、目指せ最先端!の価値観だけで、大多数のヒトが満足したもの。

 それ故に、提案する側もコストの制限だけに気を遣えば済んだのだが、そんな時代じゃなくなった。

 住宅に関するあらゆるモノの性能が、大多数のヒトの望む最低限レベルを上回った結果、

 それ以上のレベルを求めるか、違う価値にコストを掛けるかってことが分かれてきた訳である。

 まさしく価値観の多様化。

 

 その結果、提案する側も、これが良いですよ!なんて単純に言えなくなった。

 例えば住まい手の思いや生活スタイル等に配慮せず、

 むやみに高い性能で造ったら、「とても住みにくい」という結果もあり得るのだ。

 

 もちろん、専門家の端くれとして、住宅に関する信念は持っている。

 そして幾度もの打ち合わせを経て、なんとか掴もうとする建て主の思いやスタイル、

 そして己の信念に基づいて「これが良いと思う」という提案はするのだが、

 合わせて「逆に考えると、注意点もあり、完璧な提案ではない」という事も言わなければいけない時代である。

 

 また、建て主がどういう依頼先を選ぼうが、どういう性能を求めようが、

 最終的には、住んでみないと実感が持てないものに対して、選択する権利と合わせて選択に対する責任も背負う

 という当然の事がアカラサマになって

 「解らないからプロに依頼してるんや!」という建て主サイドの伝家の宝刀が錆び始めた時代でもある。

 

 建て主も専門家も意識改革の時代なのだろうなぁ。

 

実例の見方
敷居1