建築の教育の場では、建物のことを考える時は「形から入ってはいけない」と教わる。

 「形から」ってのは、外観などのデザインから考えてはいけないってこと。

 そんなら何から考えるのか、というと、動線、つまりヒトの動き(使いやすさ)や敷地の特徴を生かす

 敷地の条件に合わせるってなことを考えるのである。

 良い建物が「良い」と言われるのは、その敷地の条件があってこそ。素晴らしい建物だからといって、

 そのまま違う敷地に建てても、良い建物になる訳がない。

 だから、「形からは・・・」というご指導になる。

 

 なにも高尚な話ではなく、敷地の方位や風向き、お隣さんとの関係など、デザインなどというモノ以前に、

 風通しや光の入り方・プライバシーなど、普遍的に住宅にとって大切なモノをどう考えるか、というだけの話。

 で、これらは敷地ごとに違う訳だから、形から入ったら敷地の条件を踏まえた良い家など出来るはずはない。

 あらゆる教育の場で、基本的にはそのように教えているハズ。

 そして、この業界の大半の計画者がどこかで教育を受けてきたハズ、なのだが・・・。

 

 住宅業界を眺めてみると、世の中の広告は全て「形を売る」という現実で埋め尽くされている。

 その代表が、メーカーさんのモデルハウスである。

 そして、そのモデルハウスが並んでいる住宅展示場ってヤツに、とりあえず行ってみようかって事になっている。

 で、皮肉なことに、それほどこだわりもなく

 「デザインなんてどうでもよい。風通しが良くて使いやすかったらそれで良い。」

 という建て主ほど、「形」で顧客をゲットするのに一生懸命な展示場で依頼先を探す、

 という皮肉なことになっているのが現実。

 

 教育を受けてきた多くのプロが、「形」で家を売っている現実と

 多くのヒトが、お隣さんも方位も風向きも無視して建っている家を見て、

 計画を依頼する相手(会社)を選んでいる、という現実が不思議なだけの話。

 

手段と目的
設計屋の話