材料を憧れとメンテナンスだけで選ぶのが大半の方々だが、そう単純なものではない。

 材料には、可能性というものがくっついている。

 たとえば、AとB、二つの材料の選択肢があるとしよう。

 Aだからこそ出来ることがあり、また出来ない事がある。そういうことである。

 

 A材で出来た家をたくさん見て、この間取りが好き、あの外観が良い、と夢をふくらませておきながら、

 材料はB材で、というご希望が出ることがあるが、その間取りはA材でしか出来ない、という場合がある。

 すべての建物は、材料・間取り・外観・コスト等々のつながりがあって出来ているもので、

 この部分はあの建物の感じ、あの部分はこの建物の雰囲気で、といった要望があると、なかなか困る。

 

 デザインでも、「A材を使ったデザインが好き」というコメントを時々聞くが、少々違うのだ。

 A材を使って良いデザインの建物は、「A材を使ったから良い」のではなく、

 「A材を上手く使いこなしたから良い」のだ。

 その証拠は、同じA材を使っても美しい建物とそうではない建物があるという事実に尽きる。

 設計屋はその違いが解る感性を持たなければいけないイキモノ。

 

 一般の方々にその感性を持てというのは酷な話だが、その感性を持っていて、その感性を駆使して、

 住まい手に喜んで貰える家を考えよう、と努力していることは知っていて欲しい。

 たとえば、木の板を壁に張ると、「板張りって良いですね!!」とよく言って頂く。

 確かに板張りには、良さがあるのだが、

 『板張りにするだけで良い建物になるなら、設計屋なぞいらないのだがなぁ・・・』

 と心の中では少々寂しい思いをしているのがケンチクカ。

 

 良い材料を使うだけで良い家が出来ると思うのは、

 高級な食材を使えば、必ず美味しい料理が出来上がると思っているのと同じですよ。

 

法律:3
材料と耐震