建築家に頼むと、何をされるか解らない、とのご意見を伺うことがあるのだが、これが解らない。

 設計屋の仕事は、基本的に提案型で、建て主が「うん」と言って下さらなければ、何も出来ないのが普通。

 要望を聞き、提案をして、了解を頂いて、初めて建てられるのである。

 

 提案には、当然目的、つまり、提案内容を考えた理由がある。

 提案の元となるのは、建て主の要望と敷地条件・法律制限。

 敷地条件ってのは、方位や道路との関係、お隣さんとの関係なんかである。

 その条件が、千差万別。

 建て主だけを考えてみても、家族構成や生活スタイルから始まって、

 風や光に対する考え方や好きな材料、趣味・夢・夫婦の力関係から、

 ほくろの位置や利き腕まで、まるでどこかの歌詞のようだが、これほど個々に違う点がある。

 

 美しい建物を造りたいのは間違いないので、デザイン的な理由が全くないとは言わないが、

 大雑把に言うと、建て主の要望を美しくまとめようとするだけ。

 その建て主固有の条件をマジメに考えて提案すれば、世界に二つと無い家になる。

 これを実験住宅と言うのであれば、その通りである。

 

 もちろん設計屋は、一般的でない提案の場合、スケッチを描き、模型を造り、考え方を説明し、

 理解して貰えるように、あの手この手を考える。

 その上で、やっぱりイヤなら、遠慮無く「イヤ」と言えば良いのだ。

 それを踏まえて、改めて提案を考えるだけのこと。

 「イヤと言いにくい」と言う方もおられるが、なに、設計屋なんかそんなにえらい人間じゃない。

 「考え直してこい」と言えば良いのですよ。ハイ。

 

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