一般の方々と建築家の間には、マリアナ海溝ぐらいの溝がある・・・気がする。

 で、その溝の理由に少々迫りたいと思う。

 もっとも大きな点は、建物を文化として捉えているかどうか、ではないだろうか。

 

 どうも文化と言うと、大半の方々が、歌舞伎や浄瑠璃、茶道なんかの

 ご大層な伝統文化をイメージするようだが、文化とはもっと日常的なモノというのが私の信念。

 文化には、庶民のものと高貴な方々のものがあるが、どちらもそれぞれにとって日常的なものである。

 例えば、庶民にとっては、歌舞伎は敷居の高い伝統芸能だが、映画は文化である。

 それにしては、日本の映画は高すぎると思う。昔ロスで観た時は6ドル台だったぞ。 話が逸れた。

 

 文化が日常的なものであることは、外国をイメージしていただければ良い。

 外国旅行をせずとも、テレビを見て、「ステキな街ねぇ」と思ったことがあると思う。

 異国情緒などと言うが、その情緒を感じさせるものは、自然を除くと、人種・食・衣服・建物である。

 その「ステキな・・・」と思ったものは、その国のヒトにとっては、日常の生活でしかないのだ。

 逆に言うと、皆さんが建てようと思っているご自宅は、何をどう理屈をこねようが、

 日本の文化の一端となるシロモノ、というワケ。

 

 文化として考えた時に出てくる答えは多種多様なので、かなりやっかいなのだが、

 建築家というのはその文化を創り出す一端を担っているという自負があるもの。

 一人の建築家ごときが文化を創り出せるワケではなく、日本中の建築家が試行錯誤を重ねた中から、

 少しずつ生まれてくるものではあるが。

 お施主さんに喜んで貰いたいのは当然の事として、それだけで良いとは思わないのが建築家だが、

 その理由がこれなのだと思う。

 

 ついでに言うと、建築に限らず、衣でも食でも、熟成したあらゆる文化は必ず「美しい」デス。

 

絶対!!
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