「絶対大丈夫です!!」

 家を建てようと思う皆さんは、この言葉を聞きたいのであって、「解らないことだらけですよ」なんて、

 プロが言った日にゃ、「こんなヤツ信用ならん。」と思うのが普通なんだとは思う。

 しかしながら、世の中には「絶対」などない。

 勉強すればするほど、解ってくるのは「絶対」ではなく、「限界」なのだ。

 

 「高断熱」にしたって、「電気代が安くなった」と喜ぶヒトもいれば

 「暮らしにくくって・・・」と落ち込んでいるヒトもいるのが事実だし、

 「IHクッキングヒーター」にして、掃除が楽だと満足するヒトもいれば、

 サッサとガスコンロに戻すヒトもいる。

 「耐震性能」だって、大企業や専門家であればあるほど、「絶対」とは言わない。

 

 ポイントは二つある。

 一つは現在での技術力の限界。例えば地震。

 日本の地震工学は、世界最高レベルだと思うが、まだまだ解らないことだらけ。

 神戸の地震に耐えた建物が、次の地震に耐えられるかどうかなど神のみぞ知ること。

 「シックハウス」問題も、とりあえず危険度の高いモノを規制しただけで、

 解決したって状態にはほど遠い。

 

 もう一つは、個人差。

 住まい方の違いや、考え方・感覚の違いってヤツである。

 自分が暮らしてみて、とても快適だから、と簡単に「完璧だ」と言うのは、少々幼い気がする。

 同じ部屋の中で、暑い!と思っているヒトもいれば、

 これぐらいがちょうど良いって思っているヒトもいるワケ。

 

 プロであり正直者であればあるほど、一般のヒトが喜んでくれるからという理由で

 「ウソ」はついちゃいけないと思うのだが、正直な話ってのは一般のヒトを相当困らせる。

 そうは思うのだが、性能が高くなればなるほど、その性能が「良い」かどうかは、

 住まい手にマッチしているかどうかに掛かってくるのが現実。

 

 解りやすく喩えると「スバル360」を「カローラ」に買い替えるのは、大半の人にとって何の問題もないが、

 「カローラ」を「フェラーリ」に買い替えても困るヒトの方が多いのと同じ。

 だからこそ「絶対」とは言えなくなったのだ。

 

建築家と設計士
建築家との溝