最近では、ニュースネタになることも少なくなったシックハウス症候群。

 その悲劇の主人公の話である。主役は言うまでもなく化学物質。

 正確に言うと揮発性の化学物質である。揮発性とは、普通の温度で空気中に出てくるものを言う。

 これがあまりにも増えすぎた上に、最近の家は普通に作ったってスキマ風などないし、

 誰も換気をしなくなったもんだから、部屋の中に溜まってヒトの体に悪影響が出始めた。

 

 体に悪いことが解ったのだから、ご遠慮願おうってのは当然のことだと思うのだが、

 どのニュースを見ても、化学物質は極悪非道なヤツってな印象で語られる。これがかわいそうなのだ。

 あらゆる建材メーカーさん、なにもヒトを病気にしてやろうと思って入れていた訳ではない。

 入れなくて良いなら、製造工程は少なくて済むし、製造機械は安くなる、

 化学物質を買う費用も要らないし、臭い工場の中で仕事しなくて済むのだから良いことだらけである。

 にもかかわらず化学物質を使うのには、ちゃんとした理由があるのだ。

 

 その理由の大半が一般ユーザーの要望だってことを知る必要があると思うワケ。

 曰く、「値段を下げる為」、「掃除がしやすいように」、「長持ちさせる為」等々。

 メーカーさんは、世間の需要に合わせて製品を作るのだから、世間の要望が化学物質を使わせたのである。

 もちろん有害性が解ってなかったから、メーカーさんは使ったワケだが。

 だから、退場を願うとしても、悪行を責めるのは止めて、労いの言葉ぐらい掛けてあげようではないか。

 

 この情報が、ちゃんとニュースで流れないものだから、

 「化学物質が無い家が欲しいの!」というご希望のお施主さんに、

 「壁はどんなのがお好みですか?」との質問に「掃除のしやすいヤツ!!」という力の入った返事となる。

 その要望が変わらないから、メーカーさんは別の化学物質に切り替えて作っていらっしゃるワケで、

 それが間違っているとは言えない状態。

 ここまで来ると、時代の最先端の問題。リスクを踏まえて自分で判断するしか無いのである。

 

ハウスメーカーの謎
建築家と設計士