ハウスメーカーさんの最大の魅力は、なんと言っても「モデルハウス」。

 建築というモノは、現物を作って「こんなのどうですか?」と提案することが出来ない。

 そこで標準より少々ハイグレードな実大見本を作って見せるのである。

 大企業しか出来ないことで、少々うらやましい。

 建て主の性格によっては、どんな家が出来るかわかるという安心感は価値があるのだろう。

 どんな家になるかワクワク楽しむことは出来なくなるが。

 

 メーカーさんのやり方は、お客さんの要望自体を売り手が作ってしまう事に他ならない。

 「こんなのが『良い』のですよ〜」という幻影(価値観)を、圧倒的な資本力で刷り込んでおいて、

 洗脳されたお客さんが「テレビで見たあれ下さい」って来るのだから、そりゃ楽である。

 個々の要望を細かく聞いたりすると、上司に怒られるだけ。

 また、お客さんは一般的な方法しか知らないのだから、要望に応えるだけなら、どうってことない。

 

 不思議なのは、建てた建物には実際いくら掛かっているのか解らないこと。

 支払った金額の中には、職人さんの手間代や材料代以外に、

 建物には直接関係のないメーカーさん自体の儲けが入っている。

 そこには、社員さんの給料や福利厚生、日本中にあるモデルハウス建設・維持費、

 ゴールデンタイムに流れるCMの放送料から各種広告費、そこに登場するアイドルの出演料、

 は当然ながら、研究開発費や会社の便所掃除の費用、

 それに私のところまで掛かってくる営業の電話代まで入っているのだから、半端な金額ではない。

 

 大手のメーカーさんだと、社員数や年間建築戸数がネットに流れているから、

 そこからあれだけの大会社を維持する為に、一軒当たりどのぐらいの費用が

 建物以外に取られているか想像してしまうのだが、まあ、ビックリする金額になるハズ。

 何をどう計算しても、設計事務所に掛かる設計料より高くなくては、あんな大会社を運営出来ない。

 にもかかわらず、その費用が、建て主との契約書に出てこないらしいのだ。

 「諸経費」などに含んで済むような小さな金額ではないはずなのだが。

 情報開示の世の中である。これをオープンにして頂かないと、

 「設計事務所の設計料って高い!」とおっしゃる方が減らないのですよ。

 

安いものには・・・
化学物質の悲劇