『ローコスト』という売り文句が、星の数ほど出回っている。

 世間の皆様がローコストって言葉に惹かれるのは、自分の収入を顧みれば否が応でも納得させられる。

 ここで真理を述べてみたい。

 必ず「ワケ」がある。安いモノには安い理由がちゃんとあるのである。

 設計屋のみならず、建築に携わる全てのヒトは、魔法使いではない。

 高いモノは高いし、安いモノは安いという現実は変わらない。

 安いというのだから、そこにちゃんと理由があるのは当然のこと。

 

 もっとも一般的な「ワケ」は、徹底的なプラモデル化。

 どこにでもあるような家で、既製品の塊にして、細かい工夫は一切しない。

 お施主さんの少し変わったご希望には「そんなことは出来ません!」と取り合わない。

 仕事の手間どころか、知恵を出す手間さえ削って(アイデアだってタダじゃない)、

 つまりは工期短縮を図るワケ。

 残念ながら人件費が一番高いのだから、これは一つの工夫であることは間違いない。

 設計屋の信念から言うと、良い建物になる訳無いのだが。

 

 よく解らないのは、シカケが見えない建物である。

 設備が充実!この広さでこの価格!高い耐震性・断熱性!で、この価格!という手の売り文句。

 どこかで聞いたことがあるでしょう。

 この手の売り文句を聞くと、見えないところで無理してるんじゃないかと心配になる。

 

 「見えないところの無理」として、職人さんの手間賃を異様に安くするってのがある。

 風の噂によると、職人さんがマジメに建物を造る気にならない手間賃しか出さない会社があるとかないとか。

 ちゃんとお金を払わずに、丁寧な仕事をしろって言ったって、そりゃあんた無理ですよ。

 そんな会社があるなんて多分風の噂だけ、と信じたい。

 とは言うものの、流通の工夫だけで、あそこまで安くなるもんなんでしょうかね。

 

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