「デザインは大切にしたいんです」とおっしゃる方が増えている気がする。

　なんとかその期待に応えようと、苦心惨憺してアイディアをひねり出すのだが、

　どうも要望と提案が噛み合わないことがあるのだ。

　どんなモノをイメージしておられるのかと、あれこれ尋ねてみるウチに

　「こんな感じが・・・」と言ってドコゾのメーカーさんの

　モデルハウスの写真が出てきたりすると、申し訳ないが当方しばしフリーズしてしまう。

　

　デザインは個人的なモノ・主観的なモノでしかないと思うのは大間違い。

　料理は、本当に美味いモノを食べないと舌は肥えないし、

　絵画だって名作を見て目を肥やさないと、解るようにはならない。

　建物も同じで良い建物を見て自分の目を肥やさないと、完成度が高いかどうかなど解る訳がない。

　設計屋たるもの、ギリシャ時代から現代に至るまで名作と言われる建物を見て目を肥やしている。

　住宅展示場しか見ていないヒトと、レベルが違って当たり前。

　

　セザンヌやゴッホなんかの世界に名だたる巨匠の作品で目を肥やしている設計屋に、

　日曜画家さんの絵を見せて「これが良いんです！」って言われても、なんともはや答えようがない。

　デザインを大切に思って下さるならば、日本の建物だけでも、

　社寺仏閣や茶室から現代的なものまで、美しい建物は沢山ある。

　ご近所の住宅展示場には無くてもネットの時代、世界は狭くなったのだから探せばいくらでもある。

　

　誰しも好き嫌いはあるものだが、たとえ嫌いなモノでも完成度の高い素晴らしいモノはある。

　また、好きな色や材料であっても、美しくないものは美しくない。

　色や材料と、デザイン・完成度は別物である。

　100人のうち、1人だけが「う〜ん、素晴らしい！」と悦に入っている建物と、

　50人が「素晴らしい建物ですな！」と言ってくれる建物では、やはり完成度が違うのだ。

　良いモノを見て、好きな、そして、レベルの高いデザインを求めて欲しい。

　

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